夢という闇の中で浮かび上がる原初の疑問。
『其は何か?』
誰か、は判らないが。
その人物に彼、長太郎を示されて問われた。
『其は汝の何か?』
『 』
銀が闇に仄めく。茶色が俺に視線を合わせてくる。
―――――あいつは俺の何だ?
もう一度重ねられた問いに、夢の中の自分は何て答えたのだろうか?
「何て答えたんですか?」
「や、それは判らない・・・・けど、・・・・何か言っていた気はするんだよな・・・・・」
奇妙な夢を見た、と。
夢を覚えていられる内に言える様な距離になったのはいつからか。
穏やかな声を聴きつつそう思い。
「じゃあ、今なら何て答えるんですか?」
抱き込まれた温かい腕の中で、
問いを形にしようと、まだふわふわ夢見心地で考える。
先輩後輩関係?(只の、では無いけど)
部活仲間?(これは正しい)
同じコートに立つダブルスのパートナー?(今では違和感など感じない)
良いライバル?(そうなりゃ良いと思う)
気の置けない親友?(まぁ近いかも知れない)
恋人同士?(フツーの付き合いじゃないが)
魂の片割れ?(そりゃ長太郎と一緒に居るとしっくりくるけど)
生涯を共にする人?(まだ早いし、今すぐ決められるモノなのか?)
「・・・・・・・・」
・・・・・・お前は、そんな言葉で一言に凝縮出来る簡単な存在ではない。
そもそもいつから、お前を表す言葉が増えた?
いつからお前が傍に居る事が当然となった?
きっかけを、近づいた日を覚えてはない。
そう、知らぬ間にお前が俺の中に位置していた。
ならばきっと、俺は。
「宍戸さん?」
其処まで考えると不意に眠くなって、抗う事なく身を任した。
呼びかける声を置き去りにして。
『其は何か?』
『其は汝の何か?』
答えるのならば。
―――――あいつは俺を浸食する者。
俺を占めるのはあいつだけなのだ、と。
再び同じ夢を見る。
あの誰か、に。
そう高らかに宣言する自分が其処にいて。
少し、誇りに思えた。
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小説ページ建設の為、日記から移植のSSS。(いつもの如く、深夜に浮かんだネタなので微妙です;)
人は皆、自分の中の他人を(ある程度整理する為に)分類するのでは無いでしょうか。
その中で分類が多岐に渡り明確に指し示せない者は、
(一概には言えませんが)自分にとって掛け替えの無い存在だと思います。
私にもそうゆう人がいるので、そう思うのですが・・・・・。
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