それは、音の無い言の葉。
秒針の音と空気の流れる音がする中で、
それは、はっきりと響く。
――――――――――その、ささやかな空間を。
ふと訪れる沈黙が心地よい、と思う。
『…』
『…』
何をする訳でもなく、何か喋るでもなく、ただ傍にいる。
沈黙の距離を埋めようとして無理をしないでも良い。
その空間も雰囲気も。
穏やかで、至上。
他の人なんかじゃ作れない。
相手限定の。
『……』
『……』
言葉なんていらない。
寄り添う熱、触れあう空気だけで良い。
そんな時は本当に緩やかに時間が流れるのだ。
"他人"には言葉を尽くさないと自分が訴えたい事を判って貰えない。
けれど共有するものが増えていく程、言葉は少なくてすむのだから。
彼との今の状況は将に極値なのではないかと思える。
言葉なんていらない、その究極の形。
彼ならば、そう彼だけは俺が何も言わなくても判って貰えると思う。
自惚れではなく、かと言って錯覚でもなく。
『……』
『……』
たまに交わされる視線が、
じっと、しかし慈しむ様に向けられる眼差しが、
それを裏付けてくれる。
『……』
『……』
そうっと自然に振りほどける位の弱さで手を握ってみても、しっかりと握り返される。
やはり、ちろりと見るだけでゆったりと伏せられる漆黒の瞳。
いっそ無防備なままに。
信頼してくれるんですよね?
貴方もこの沈黙が心地よい?
『……』
『……』
ありったけの気持ちを込めて、その手を包み込んで。
指先、左の薬指に触れるだけの口付けを送る。
愛しい。嬉しい。幸せ。
全ての綺麗な感情を、
彼にとっての特別な日、新しい一年の始まりに捧げ直す。
『……』
『……』
ゆるりと開かれる眼差し。
微笑んで同じことを返してくれた。
きっと俺は、彼以上に嬉しげに微笑んでいるに違いない。
幸せすぎる、このささやかな空間。
それらを与えてくれる彼と彼の存在。
ありがとう、と感謝を。
誰でも良い。
この奇跡を此処に齎してくれた人たちに、ただ感謝を。
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日記に載せた宍戸さんお誕生日SSS(のつもり)より少し改訂。
たまには甘いのを書きたいなぁと思って甘くしてみました^^;
(海石は暗いのしか書かないよねって言われたのもありますが。/苦笑)
内容について。
何も言わなくても通じる関係は好きです。
素のままの自分が、相手に許容されていると思えますし。
沈黙が苦にならない事はある意味、関係の指標でもある様に思うので^^
改訂に関して悔やむべく事は、全部書き直してTEXTにしようとしたのですが、時間が経ちすぎていて無理だった事です……
それと、何となく最後が纏まらないままになってしまった事でしょうか……;
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