どうか、知らないままでいて。

貴方との距離を計算する、卑怯な俺が居る事を。







   『距離』







いつも、どの距離が相応しいか、どの距離までなら今の自分に許されているのかを計算している。

いつからか、なんて覚えてない。

ただ、気付いた時にはそうだった。



呼ばれるようになった名前に安堵する。

苗字で呼ばれていた、大勢の中の一人、という枠組みから脱却したのが実感出来るから。



お気に入りの"後輩"としての親しみ。

同じ高みにいる"仲間"としての意識。

同じコートに立つ"パートナー"としての信頼。

全てを考慮して。

表情を作り。

言葉を紡いで。

そして―――――触れる。



年下故の武器。仲間故の近さ。傍に立つ事を許された故の機会。

日々強める関係に、近くなる関係に紛らわして。

触れる理由を、不自然さを紛らわしていく。

彼が疑問に思って離れて行かない様に。

挨拶を一方的に交わしていた、遠さ。

それはつい最近までのこと。v しかし今は、じゃれ合う事も許される近さ。

手に。肩に。頬に。髪に。

触れられる距離は、俺の拙くてズルイ努力の成果だ。



計算して、加算されていく距離。

何処まで道は許されているのだろうか。

それらは何時、終着点に着いてしまうのだろうか。

最近、進もうと計算する自分とは別に、残りの距離を恐れる自分の矛盾がある。






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前の日記からサルベージ……(<新しく書けや。)の、鳳さん視点SSS。
二年前に書いたのに、書くものの傾向は変わってない(寧ろよりディープに進化)という事に気付く一品。
幾ら自分的に痛くとも折角書いたんだしみたいな……まぁ、自分の痛々しさを再確認する為と言う事で……。
だから自虐的(マゾ)とか言われるんだろうな。

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