――――――――――そこは終着地。そして……始まりの場所となる。 木深い森の中に、申し訳ない程度の道が細々と続いている。 生命の気配が全く感じられないこの森に不自然に在るその道を掻き分けつつ進むのは……一人の若者。 立ちはだかる枝葉を退ける度に靡く、一度でも目にすればきっと誰もが忘れはしないだろう 若者が自らを"紫紺"と名乗る由来ともなっていた。 その名の由来ともなっている髪を更に鮮やかに引き立てているのは萌える様な翡翠色の両眼。 そして右耳にした、淡く光る黄緑のい月光石と言われるピアス。 もし月華が差していたならば、どれも感嘆の溜息をつかせる程、鮮麗なものだった。 しかし惜しくも此処は、生い茂る木々により一筋の光も通さぬ森の中。 若者の容貌どころか、目前の景色を見ることすら儘ならない。 前述の月光石だとて黒暗暗たる闇を照らし尽くす事は出来なかった。 若者に感じる事が出来るのは清清しいぐらいの森林特有の香りと、葉擦れの音。 そして。 やはり依然として闇が居座る森と、歩けど歩けど変わらぬ、手が葉や枝を掻き分けた感触、 それに足が踏み締めた枯葉や土の感触だけだった。 |